飲食業は外国人スタッフの活躍が目立つ業界ですが、在留資格ごとに「任せられる仕事」の線引きが最もシビアな業界でもあります。出入国在留管理庁が公表している飲食店向けの整理をもとに、採用前に知っておきたいポイントをまとめます。
「技術・人文知識・国際業務」では調理も接客もNG
まず、いちばん誤解が多いところからお伝えします。技人国の在留資格では、
- 調理業務(厨房での食材の仕込み、調理、盛り付けなど)——不可
- 接客業務(席への案内、注文伺い、配膳・片付け、会計対応など)——不可
です。「大卒のスタッフだから大丈夫」ではありません。技人国は学術的な知識を要する業務のための在留資格であり、調理や接客はその範囲に含まれない、というのが入管の整理です。
では技人国で何ができるかというと、
- 店舗経営(経営分析、経営管理、契約に関する事務など)——可
- 店舗管理業務(衛生管理、従業員の管理・指導、会計事務、在庫管理など)——条件付き(△)
店舗管理業務については、店舗の具体的な態様、本人の活動内容やキャリアパス全体などを総合的に考慮して個別に判断されます。たとえば「本社の幹部候補として、育成計画の一環で店舗運営を管理する」ような設計なら認められる余地がありますが、その場合でも自ら調理・接客に従事することは認められません。
現場を任せられる在留資格
調理・接客を含めて任せたい場合、制度上は次の在留資格が整理されています。
- 特定技能1号(外食業分野)——調理・接客・店舗管理まで従事可能(店舗経営は不可)
- 特定技能2号(外食業分野)——店舗経営を含めて従事可能
- 特定活動46号(本邦大学等卒業者)——調理・接客・店舗管理・店舗経営のいずれも従事可能
【重要】特定技能「外食業」は新規受入れが一時停止中です
ただし、大きな注意点があります。外食業分野の特定技能1号は在留者数が受入れ見込数(上限5万人)に達する見込みとなったため、2026年4月13日から、新規の受入れが原則として一時停止されています。
- 新たに特定技能(外食業)で人材を呼び寄せる・切り替えることは、原則できません
- すでに外食業で在留中の方の在留期間更新や、外食業の店から外食業の店への転職は、引き続き可能です
つまり現時点では、「これから特定技能で外食の人材を新規採用する」という選択肢は事実上使えない状況です(最新の運用は出入国在留管理庁のご案内でご確認ください)。
では、現場は誰に任せられるのか——現実的な選択肢
特定技能の新規受入れが止まっているいま、飲食店が現場業務を適法に任せられる相手を現実的に整理すると、次のようになります。
1. 身分系の在留資格をお持ちの方(永住者・日本人の配偶者等・定住者など) 就労の制限がないため、調理・接客を含めどの業務にも従事できます。実は飲食の現場を支えている外国人スタッフの多くはこの類型で、採用にあたって入管への申請も原則不要です(在留カードの期限確認は必要です)。
2. 資格外活動許可を持つアルバイト(留学生・家族滞在の方など) 週28時間以内という上限を守れば、現場業務に従事できます。28時間は「全ての勤務先を合計して」の上限なので、掛け持ちの有無の確認と、シフトでの時間管理が店側の責任になります(詳しくは資格外活動許可の解説記事をご覧ください)。
3. 外国料理の調理師(在留資格「技能」) 本格的な外国料理店であれば、実務経験を積んだ調理師を「技能」の在留資格で招く道があります。原則10年以上の実務経験が必要など要件は厳しいものの、専門料理店では現在も使われている選択肢です。
4. すでに特定技能(外食業)で在留中の方の転職受け入れ 新規の受入れは停止中ですが、外食業から外食業への転職は可能です。
なお、制度上は「特定活動46号」(日本の大学等卒業+N1相当)でも現場業務を含め幅広く従事できますが、対象となる人材はかなり限られており、該当する方が飲食の現場職を選ぶケースは多くありません。選択肢として知っておく程度の位置づけが実際的です(制度の詳細はこちらの記事をご覧ください)。
実務のポイント
- 採用の入口で「任せたい仕事」を書き出し、どの在留資格なら適法に任せられるかから逆算する
- 技人国のスタッフに繁忙時の「ちょっとした手伝い」で接客をさせる運用は、常態化すれば資格外活動です。シフト設計の段階で線を引く
- 求人票・雇用契約書の職務内容と実態を一致させる。乖離は更新申請のときに表面化します
なお、ホテル・旅館での業務の線引きについては別の記事で解説しています。あわせてご覧ください。
まとめ
- 技人国では調理・接客は不可。店舗管理は個別判断(△)、経営事務は可
- 特定技能(外食業)は2026年4月から新規受入れが一時停止中(在留中の方の更新・外食業間の転職は可能)
- 現場の現実的な担い手は、身分系在留資格の方・資格外活動のアルバイト(週28時間)・外国料理の調理師(技能)
- 職務内容の設計と実態の一致が、本人の在留と店のコンプライアンスを守る
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の案件に関する法的助言ではありません。最新の情報は出入国在留管理庁のウェブサイトでご確認ください。具体的なお手続きについては、お問い合わせフォームよりご相談ください。