合併や会社分割などの組織再編では、登記や労務、税務の対応に目が向きがちですが、外国人社員の入管手続きは見落とされやすい論点です。手続きを怠ると、本人の在留資格の更新時に不利益が生じたり、最悪の場合は在留資格の活動範囲から外れた就労(不法就労)と評価されるおそれもあります。再編のスキームを検討する段階で、ぜひチェックリストに入れておいてください。

判断の軸は「雇用契約の相手が変わるか」

入管手続きが必要かどうかは、再編の結果としてその社員の雇用契約の当事者(雇用主)が変わるかどうかで判断するのが基本です。類型別に見てみましょう。

  • 吸収合併——消滅会社の社員は、雇用契約が存続会社に承継され雇用主が変わるため、手続きが必要です。存続会社側の社員は雇用主が変わらないため、原則として手続きは不要です。
  • 新設合併——どちらの会社の社員も雇用主が新設会社に変わるため、全員について手続きが必要です。
  • 会社分割(吸収分割・新設分割)——承継される事業に属する社員のみ雇用主が変わり、手続きが必要です。元の会社に残る社員は原則として不要です。
  • 事業譲渡——雇用契約は自動的には譲受会社へ承継されません。譲渡先へ移る社員は退職・再入社の形になるため、手続きが必要です。
  • 出向・転籍——転籍はもちろん、在籍型出向でも出向先との間に雇用契約が成立する場合は手続きが必要です。グループ内の人事異動だからと見過ごされやすい類型です。

必要な手続きは在留資格によって3つに分かれる

雇用主が変わる場合に何をすべきかは、その社員の在留資格によって異なります。

  1. 「技術・人文知識・国際業務」など多くの就労資格——本人による「所属機関等に関する届出」(変更から14日以内)を行います。比較的簡便な手続きですが、期限が短いため、効力発生日にあわせた案内が必要です。
  2. 特定技能・高度専門職・(就労系の)特定活動——これらの在留資格は、働く会社が「指定書」で個別に指定されています。雇用主が変わると指定の内容と合わなくなるため、届出では足りず、在留資格変更許可申請が必要になります。審査には時間がかかるため、再編の効力発生日から逆算した準備が欠かせません。
  3. 技能実習——技能実習計画は実習実施者ごとに認定されているため、計画の認定を取り直す手続きが必要になります。

同じ「合併」でも、社員の在留資格によってやるべきことがまったく違う——ここがこのテーマのいちばんの注意点です。再編対象の会社に外国人社員がいる場合は、まず在留資格の一覧を作って類型を仕分けることから始めるとスムーズです。

あわせて確認したいこと

  • 届出だけで済む場合でも、再編に伴って職務内容が変わるのであれば、新しい業務が在留資格の活動範囲に収まっているかの確認が必要です。疑義があれば就労資格証明書交付申請の活用を検討します。
  • 在留期間の更新が近い社員は、更新申請と再編手続きのタイミング調整も考えておくと安心です。

まとめ

  • 手続きの要否は「雇用契約の当事者が変わるか」で判断する。出向・事業譲渡は要注意
  • 必要な手続きは在留資格により3グループ(届出/変更許可申請/実習計画の再認定)
  • 変更許可申請が必要なグループは審査期間を見込み、再編スケジュールに組み込む

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の案件に関する法的助言ではありません。組織再編の類型や在留資格によって必要な手続きは異なりますので、具体的なお手続きについては、お問い合わせフォームよりご相談ください。