令和2年(2020年)4月1日から施行されている改正民法ですが改正法は原則として施行後に締結された契約に適用されます。契約実務で注意すべき変更ポイントをいくつかご紹介いたします。
①法定利率の変更
改正前の法定利率は
民法……年5%
商法……年6%とされていました。
しかし、この利率は、明治期に民法・商法が制定されてから見直されておらず、現在の市中金利から大きく乖離しています。 そのため法定利率が合理的に変動するような仕組みを定めました。
改正後では、商事法定利率が廃止されて一律3%とされます。ただし、3年ごとに法務省令で1%単位で見直しします。(民法404条)
②消滅時効の統一
改正前の民法では
短期消滅時効……飲食店の債権など特定の債権は1年~5年
通常の債権……10年で時効消滅していました。
改正後は債権の種類を問わず原則として、権利が行使できることを知ってから5年または(知らなかったとしても)権利を行使できる時から10年のいずれか早い期間が経過することで時効消滅します。
③定型約款の規定が新設
改正前の民法では約款に関する規定はありませんでした。
改正後は定型約款の定義、定型約款が契約内容となる要件、定型約款の変更要件が定められました。
約款は大量の同種取引を迅速・効率的に行う等のために作成された定型的な内容の取引条項のことで
例えば、鉄道やバスの運送約款、電気・ガスの供給約款、保険約款、インターネットサイトの利用規約など、多様な取引で広範に活用されています。
●事業者は約款を契約内容とすることを明示していれば取引の相手方が理解していなくても有効とすること
●取引の相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則に反する内容については、合意したとはみなさないこと
●相手方の一般の利益に適合するなど一定の場合に、事業者が一方的に定型約款を変更することにより、契約の内容を変更することが可能であること(→ 既存の契約についても契約内容が変更される。)
が規定されました。
④請負の報酬請求権
改正前の民法では請負契約について注文者の帰責性(責任)なく仕事が途中で完成されなかったり、解除されたりした場合の請負代金の支払いについて定めはありませんでした。
最高裁判所の判例で、請負人の仕事が未完成であっても、仕事の結果のうち可分な部分の給付により注文者が利益を受けるときは、 注文者は、契約の解除ができず、報酬請求権も失われない、というのが実務上の運用になっていました。
改正後は
①注文者の責めに帰することができない事由により仕事を完成することができなくなったとき
②請負が仕事の完成前に解除された場合について、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって、注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができると明記されました。(民法634条)
⑤請負人の契約不適合責任
改正前の民法では請負契約によって引き渡した仕事の目的物が、契約の内容に達していない場合、請負人は担保責任(瑕疵担保責任)を負うものとされ、その期間は請負の場合、改正前まで成果物の引き渡しから一年間とされていました。
改正後は「瑕疵担保責任」を廃止し「契約不適合責任」に改められ、その期間は契約不適合を知ってから一年間へ起算点が変更されています。
契約で特別な合意がない場合には実質的に請負人の責任を負う期間が延長されたことになります。
また、改正に伴い責任の範囲が変更されており
瑕疵担保責任では損害賠償請求・契約の解除の二点であったのに対し
契約不適合責任では履行追完請求・報酬減額請求・損害賠償請求・契約の解除と責任の範囲が広くなっています。
ただ、契約上での当事者間の合意が優先することは改正前のルールと変わりませんので、契約交渉を有利に進め、契約書に記載することがより重要となります。
⑥賠償額の予定
これまでは契約書で予定された損害賠償額が実際の損害額と乖離している場合、裁判所は賠償額を増減できませんでした。
改正法では、民法第420条第1項後段が変更され、契約書上での損害賠償額が実際の損害額と乖離し現実の損害からかけ離れた法外な金額が規定されている場合、裁判所が調整できるようになりました。
